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それはアストロ球団である。

2005.4.9


『アストロ球団』といえば、
って誰もなんにも言ってないけど。
私が少年ジャンプを読んでいた頃にちょうど連載されていて、けっこうまじめに読んでいた。
男たるものアストロ超人のように生きるべきだと信じていた。
男の生きザマを教わった。

「人間の体で急所が一番少ないのは背中だ」

ということを教えてくれたのも『アストロ球団』だった。
何か硬いものが向こうから飛んできたら背中で受けようと思いながら日々過ごしていた。

今日に至るまでそんな機会はなかったが。

その『アストロ球団』の実写ドラマが深夜に放送されていて、毎週録画して楽しみに観ていた。
水曜日の夜中、というか、木曜日の午前3時10分からの放送であった。
深夜の放送ゆえ、新聞のテレビ欄にも、

「3.10球団」

とだけ表記されていた。
知らない人にはなんじゃこりゃ?である。
放送時間を除いたら、たった二文字しかスペースが与えられていない。
2時間もののサスペンスドラマの扱いとはえらい違いである。

大袈裟なマンガのイメージをまじめに再現しようとしているそのドラマを、はじめの頃は、薄笑いを浮かべ、突っ込みを入れながら観ていたが、連続ドラマの不思議な力で、回が進むにつれて超人たちに感情移入し、一試合完全燃焼を目指すその姿に涙することも一度や二度ではなかった。
やはりアストロ超人は私の人生のお手本だったのだ。
思わず涙するより思わず吹き出してしまうことの方が何十倍も多かったが。

私が秘かに「日本一ヘリコプターが似合う男」と呼んでいる千葉真一に、しっかりヘリを使ったシーンを用意していたのもポイントが高い。

超人たちの生き方には感動させてもらったが、設定には大きに疑問がある。

アストロ球団は、かの大投手沢村栄治に野球のすばらしさを教わったシュウロという少年が、大人になり、沢村が理想とした理想とした野球チームを実現させたチームである。
しかし。

沢村栄治は本当にこんな野球をするチームを作りたかったのだろうか?
こんな、ほとんど集団格闘技、というより殺し合いに終始する血まみれの野球をするチームを理想としていたのだろうか?
ひょっとしたら原作者は、沢村栄治と沢村忠を間違えていたんじゃないかという疑惑すらわき上がって来る。

その『アストロ球団』も、「第9球(後編)」で、とうとう最終回を迎えてしまった。

ドラマはやや粗いながらもそれなりに終結したが、ドラマ『アストロ球団』の最終回が、私の心に強く残したものは、ドラマの場面や、セリフではなく、新聞のテレビ欄の表記であった。





もうなにがなんだか、である。


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Memories of summer vacation
  
 2005.8.22


西暦2005年の夏休み。
中学2年生の息子にこんな指令が下った。

「夏休みの思い出を一日分、絵日記で提出せよ。ただし英語で」

指令遂行に必要なものは三つ。

英語力、絵画力、そしてなにより、「おもひで」。




長男は、お盆休みに家族で行った海水浴、そしてその帰りに寄った鴨川シーワールドでのおもひでを選んだ。

絵にしたのは「アシカのショー」。

ああ。楽しかったよね。
アシカたちがいろんなことしてたね
ボールをポンポンしたり、拍手したり笑ったり。
きっと楽しい絵が描けるよね。




約一週間後、絵日記は完成した。

完成した絵日記が息子から妻に手渡された。


絵日記を見た瞬間、妻は天を仰ぎ、その場に崩れ落ちた。

震える手で絵日記用紙を私に渡す妻。





私に渡された用紙には、しっかりと、長男の夏休みの思い出が描かれていた。






























息子に良い思い出を与えられたようで、父親として満足である。












息子よ。











人生はつらく厳しいことの連続である。

















私も、時に疲れ、その場にへたりこみそうになる。










だが息子よ。







君の絵を見ていると、
















なんとかやっていけそうな気になるよ。


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