み か ん

「そうかぁ、君たちはあの木にいたんだぁ」

「うん。ぼくはミカタロー、これは弟のカン吉」

「にいちゃん、このおじさん誰?」

「おれたちの隣の木にいたんだって」

「ふうん、あの日当たりの悪いほうの?」

「日当たりが悪いはごあいさつだなぁ、まぁ、君たちは遺伝子組み換えだからな。日当たりもいい所に植えられてたのさ」

「え?!」

「なに?おにいちゃん、いげんしってなに?」

「ウソだ!このおじさんはウソ言ってるんだ!信じちゃダメだぞカン吉」

「あれ?知らなかったのか。こいつは余計なこと言っちまったなぁ。まぁ、気にすんなよ。遺伝子組み換えでもみかんはみかんなんだから」

「カン吉、信じるなよ。このおじさんはウソつきみかんなんだ」

「う、うん…」

「まいったなぁ」

「あっ!」
「何?にいちゃん、あれ何?」
「人間だ!」

「あ、ああああっ!」

「ああっ!にいちゃん!」

「カン吉、見るな!」

「あああ、だっておじちゃんの皮を!皮をむいてるよ!」

「見るな!」

「にいちゃん、怖い!」

「大丈夫。にいちゃんがついてるぞ」

「…」

「おじちゃん…」

「にいちゃん、ぼくたちもこうなちゃうの?」

「いいかカン吉よく聞けよ。
今度人間が来たら大きな声でこう言うんだ。『ぼくたちは遺伝子組み換えみかんです。ぼくたちは遺伝子組み換えみかんです』って」

「え?ぼくたちいげんしくみかけみかんだったの?」

「そうじゃない。そう言えば人間は食べたがらないんだ。来たぞ!」

「ぼくたちは遺伝子組み換えみかんですぼくたちは遺伝子組み換えみかんですぼくたちは遺伝子組み換えみかんです、おまえも言えよ!」

「ぼくたちはいげんしくみかけみかんですぼくたちはいげんしくみかけみかんですぼくたちはいげんしかみかけみかんげしっうわあっ!」

「にいちゃん助けてっ!」

「ちくしょう!弟から手を離せ!コノヤロー!食うんなら俺を食えーっ!!」

「ああああああ!にいちゃあががが〜」

「カン吉ぃ〜」

「くそぉ…人間めぇ…よくもカン吉を‥」

「俺は遺伝子組み換えみかんだ俺は遺伝子組み換えみかんだ俺は遺伝子組み換えみかんだ」

「俺は…」



・     

・    
 ・

シュカッ!

  ・

・         ・ ・

うぎゃぎゃああああああああ!


・      
            

「ふっ…」

「俺にこんな力があったとはな」

「薄汚い人間どもめ」

「こうなったら、この力で人間どもをみな殺しにするまで、たたかってたたかって戦い抜いてやる。見てろよカン吉」

「カン吉よォ…」

「カン吉よォォォォォォ!
カン吉よォォォォォォ!
カン吉よォォォォォォ!」


これが

世に言う「第1次みかん戦争」の発端であった。

つづく 


●この物語はフィクションです。
撮影にあたって、遺伝子組み換えみかんは一切使用していません。

(C)2004 OTO


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