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「おや、そりゃどこだい?」 |
「私が泳げないのは頭の輪ッかが重いせいです。私はもともと泳ぎは得意で、子供の頃はみんなに河童って呼ばれてたくらいなんですからね」 「なんだい。河童なんて架空の生き物じゃないか。この世に河童なんていやしないんだよ。 私が思うに道を間違えたのはもっと前だね」 |
「もっと前というと、このあたりですか?」 「違うよ。それじゃ最初っから間違えっぱなしじゃないか。あたしたちゃそんなにバカかい?」 「そうするとこのあたりで?」 「もうちょい先もうちょい先。ふぅ〜」 |
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「ここですか?」 「違うよ。ふぅ〜ふぅ〜、ほらそこそこ」 「なにふうふうしてるんですか?」 「あたしの息が指すところをよくごらん。ふぅ〜ほら、今のところ大当たり」 「横着しないで手を出して指してくださいよ」 「いやだよさぶいもの」 |
「それにしてもここはホントに寒いねぇ」 |
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「どこでもいいからあったかい所に行こうよ」 |
「とりあえずだよ、と・り・あ・え・ず。 |
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「どっかでゆっくり温泉にでもつかってさ、あったかーい鍋でもつつこうよ」 |
「いや、俺も鍋は好きだけどさぁ」 |
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天竺ヘの道は、 あの道を左だった。 |
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