時は戦国。大嵐の時代。

血で血を洗う戦乱に、

山河は荒れ、

人心はさらに荒れ果てた。

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しかし。

いくさに明け、暮れる武士の中に、

この世の真実を訴え続けるひとりのサムライがいた。

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"It's true"
SAMURAI

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「嘘であろ〜」

「まことじゃ〜」

「拙者の兄嫁の幼なじみが見たんじゃぁ〜」

「湖をおおっていた霧がすっとふたつに割れたと思ったらその生き物がおったんじゃぁ〜」

「火の見櫓ほどの高さのところに頭があったというからどれほど大きな生き物か。
首から上だけで火の見櫓だぞ

とにかくその大きな頭が湖の中からぬっと現われて、長い首をこうとめぐらせてな、岸辺に立っていた者たちをのぞきこんだというのじゃ。」

「みんな恐ろしくて逃げるどころかぴくりとも動けんかったそうじゃ。

そいつは、生臭い息がかかるほど顔を近づけてのぞきこんでいたそうじゃが、しばらくするとまた湖に消えて行ったそうじゃ。

あとはまた深い霧で何も見えんようになってしまったということじゃ」

「嘘であろ〜」

「まことじゃ〜
おぬしは頭が固くていかん。

あとで都の学者にその生き物の姿かたちをくわしく話したところ、大昔に生きていた生き物がいかなる理由でか現代まで生き残ったものであろう、ということじゃ」

「嘘であろ〜」

「まことじゃ〜」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴォーー

 ズザァッ

 キィィーーン

「嘘であろ〜」
「まことじゃ〜」

「拙者の母方の叔父の同僚が見たんじゃぁ〜。

その黄金色に輝くお釜は、ぎゅうーんと夜空を飛んで近づいてきたかと思うと頭の上でぴたっと止まってな。
恐ろしさに逃げることもできずにただ見つめていると今度はひら、ひら、ひら、と、木の葉のように音も無く舞い降りてきたそうじゃ。ひらひらひら、と。」

「嘘であろ〜」
「まことじゃ〜」

「強情じゃのう。おぬしもそんな下らない話ばかり仕入れていないでそろそろ身を固めろ」

「赤子が生まれると言う事が違うのう。坊はいくつになった?」

「まだひとつじゃ」

「可愛かろう?」

「ま、まあな」

「会いたかろう?」

「ま、まあな」

「もう父上と呼ぶか?」

「呼ぶか。まだ赤子じゃあ」

「何を言う。生まれてすぐしゃべり始めた赤子の話を知らんか?あれは紀州の…」

「いいかげんにせんか。そんな話を真に受けておるからおぬしには縁談も無いのじゃ」

「何を言うか、拙者にも縁談のひとつやふたつ…」

「嘘であろ〜」

「まことじゃ〜」

「ふふ。…こんなことはおぬしにしか話せぬが、子が生まれてからは、戦で手柄を立てて出世するより、貧しくとも家族そろってつつましく生きていきたいと思うようになってなぁ」

「まあ、そういうものであろうよ」

ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ

ガヒィィンン

ズバヒュッ!

「見えるか?あそこの三角の大きなお山にな…
虹色に輝く、大きな鳥が棲んでおる」 

「嘘であろう」

「まことじゃ」

「大きな大きな鳥でな。翼を広げると、
ちょうど大人ふたりが手を広げて並
んだくらいの大きさになるのじゃ」

「嘘であろう」

「まことじゃ」

「その鳥の虹色の羽根には不思議な力があってな…
病人や怪我人をその羽根でひとなですると、
どんな病気も怪我もたちどころに治ってしまうのじゃ…」

「……」

「…まことじゃ」

「その山に登ると、そこらじゅうにその虹色の羽根が落ちていてな…」

「……」

「おかげでこのあたりには昔から病人も怪我人もおらんそうじゃ…」

「…どんな傷も…怪我も…」



。。





「まことじゃぁ まことじゃぁ…」

まことじゃ侍 

(C)2005 OTO



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