長安を出発して4,248日目。


「わぁ〜助けてくれ〜。もう悪さはしないよぉ〜」
妖怪たちはスタコラと逃げてゆきました。

こうして、孫悟空、猪八戒、沙悟浄らの働きで、見事妖怪の大親分をやっつけた三蔵法師一行でありました。


その行く手に見えてきたのは、おお、あれこそは天竺、大雷音寺ではありませんか。
「さあ、お師匠様、参りましょう」

一行の心は、その日の青空のように清々しく晴れ渡り、一点の曇りもないのでありました。


「さぁ、次は最終回だよー。三蔵法師たちは本当にお経を持ち帰ることができるのかなぁ?よい子たちは絶対に見逃しちゃだめだよ〜」
「おじちゃん、水アメおくれ」

「おいらにも」「おいらも」

「はーい。並んで並んで〜。順番だよー。みんなお小遣いはもってるかなー」
「へ〜。世の中には偉い人がいるもんだねぇ〜。人々を救うためにお経を取りに行ったんだってさ。それも天竺なんて遠いところにだよ」


「天竺に着くまでに何年もかかったらしいですよ。辛抱強い人たちですよねぇ」
「お腹も空いたでしょうにねぇ」

「ホント、立派な話じゃないか。あたしゃ感心したよ」

「おい。
こら。
そこのハゲサルブタ」


「へ?」
    
「ハゲ?」          「サル?」               「ブタ?」

「そう。お前らのことだよ。そんな珍奇な組み合わせ、他に存在しないだろ!」
「お前らなぁ、こっちが黙ってりゃ、毎日毎日タダ見しやがって。
こっちは道楽でやってんじゃねぇんだ!

子供だって紙芝居を見た後はこうやってお金を払って水アメを買うもんだとわかってんのに、大人のお前らがタダ見を決め込むたぁ、いったいぜんたいどうゆう了見だ。

水アメを買うならよし、もしも銭がねぇってんならとっととうせて二度と俺の前に現れんじゃあねぇ!
この次見かけたらケツの穴に割り箸つっこんでグリグリねじ回してやるからなっ!」



「やれやれ。なんて乱暴な人だい。行こ行こ。

せっかく天竺へ行った立派なお坊さんの話で感動していたのに、台無しだよ。
どぉ〜せ、作り話なんだから。どお〜せ。。
だいたい河童が出てくるなんて、でたらめすぎるよ。
河童というのは架空の生物なんだからね」
「おとうちゃんはらへった」
「よしよし、帰ってお母ちゃんにおまんま作ってもらおうな」



その村から天竺方面に歩いて半日ほどの距離にある山中。


「おーい」



「お前もこっちに来て水浴びしようぜえー。おーい。おーいったらぁ」」

「………」

「なんだよあいつ。返事もしないでさ」



「だめだめ。あいつはだめなんだ」

「だめって?」

「お前はこの河に来たばかりだから知らないだろうけど、あいつさぁ、天竺へ行くお坊さんがもうすぐここを通るからそのお供をしろって、夢枕に立ったお釈迦様に言われたんだって。それでずぅーっとあそこで待ってんだぜ。三年も」
「さんねん!?」

「そう。三年間、毎日毎日あすこに立って待ってんの。その坊さんを」」

「さんねんかん!毎日!ぶっはっばっかじゃねぇの?!」

「バカなんだよ。俺たち河童はよう、水浴びしたり相撲をとったり、きゅうりを食べたりして生きてくようにできてるっていうのにさ。
それを天竺って。
頭のお皿も乾ききるっちゅーねん」



天竺への道は
天竺への道は


ピキッ
西域探行絵巻

終劇
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