長安を出発して6,002日目。


「あぁ、もう毎日毎日歩き続けるのも容易じゃないねぇ、なぁ猿よ」

「そうでございますねぇ…」
「そういえば、前は馬に乗って旅をしていたような気がするんだけど、あの馬はどこへ行ってしまったんだろうねぇ、なぁ、豚よ」

「どこへ行ってしまったんでございましょうねぇ…」

「なんていうか…

こうやって歩いているところへ、どこからともなく馬が駆け寄ってきて、『お乗りくださいヒヒ〜ン』なんて言わないものかねぇ」

「お師匠様、しゃべる馬なんてこの世にいませんよ」

「しゃべる豚が自分のことは棚に上げて何言ってんだろうねぇ」

「ブヒッ」

「お、お師匠さま…」

「情けない声を出してどうした、猿よ。
私の弟子ならば常に平常心を保つべしよ。
師匠として恥ずかしいぞよ」

「お師匠様…
むこうから何かが近づいてきます」

「なんだい?馬かい?馬が近づいてくるのかい?」

「い、いえ、馬ではありません。
あれは…あれは…いったい…」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ

「な、な、なななななななななんだいありゃあっ!?」

「わ、わ、わ、わかりませんお師匠様!」

「どんどん近づいてくるぞぉっ!」

「なんとかおしっ!おしったらおしぃっ!!」


ズゴゴゴゴゴォォォォォ
「あ〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜
た〜す〜け〜な〜さ〜い!」





c


朝、

目が覚めるとそこは。

c


天竺へ旅をするどころか、

毎日、

同じ時間に起きて、
同じ電車に乗って、
同じ会社に行って、
同じような仕事をする、

そんな世界だった。
変質者や、
テロリストや、
大統領の軍隊が、

毎日子供を殺し続ける、

そんな世界。


みんな、すがりつくように携帯電話を撫でまわす。

そんな世界。

私も。
お経で人々を救うだって?

つづく
(C)2005 OTO

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