2007.7.16



「ニンゲンミナゴロシ。サルノ カチ ダ」
「たくさんの猿が死んだ」

「ニンゲン ミンナ シンダ。 サル ハ イキテイル」

「死んだ猿のほうがはるかに多いぞ。それでも勝ちか?」

「…オマエハ ムズカシイ。
イイ ヘイシ ナノニ
 オレハ オマエノヨウナ ツヨイ ヘイシニナリタイ」

「私は兵士ではない」
「兵士は軍隊に属するもので、軍隊は国家に属するものだ。
猿は国家を持たない」

「オマエハムズカシイ」 
「うっ…」

「ドウシタ?」

「頭が…」

「ニンゲンニ ヤラレタ カ?」

「いや…」

人間を殺した後はいつもこうだ。
鋼鉄の輪で締めつけられるように頭が痛む。

一体なぜだ?



ゴゴゴゴゴゴ-・・
ドドッ、ドドッ、ドドッ、バンッ!

「博士っ!博士っ!」      
「接近する嵐に匹敵する騒々しさで飛び込んでくるほどの一大事がどんなものなのか、落ち着いて静かに話してもらえるとうれしいのだが」

「これが落ち着いてなんかいられるもんですか!成功です!大成功です!!」
「なんだって!?」

「早く研究室へっ!!」

ドッドドッドッドッドドドドドドッドッド

バァン--

おおうっ!

「饅頭が!饅頭が!」
こんなにもたわわに饅頭が!」

「わ、わ、私の饅頭。こんなにも饅頭」
「博士、おめでとうございます。これで次の世界科学技術大賞は博士のものです」

「何を言っておる。科技大賞などどうでもよろしい。
この世界では10億匹のブタが飢えに苦しんでおる。
この饅頭の木がその10億匹の飢えたブタを救うのだ!
それに代わる名誉など無い!さぁ、行くぞ!」

「え?どちらへ?」
「決まっておる。饅頭の木を植える旅に出るのだ」

「今すぐにでございますか?」

「そうだ。旅立ちが一日遅れれば千匹の子ブタが飢えて死ぬと思え」

「せ、千匹の子ブタが、でございますか!
なんと。博士は数えたのでございますか?」

「そのくらいの心構えで事に当たれということじゃ」

「わかりました!肝に銘じて事に当たります、博士!」

「たのんだぞ」

つづく 
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