活字の子

ハチミツとクローバー 1〜10
 

羽海野チカ (著)  集英社
2008.9.21


我が家でハチクロブームが起こったのは2006年の12月であった。

ツタヤに行った時に、妻が「これ見たい」と言い出し、アニメの DVD を借りてきた。
私、妻、翌年は高校生になる長男、翌年幼稚園に入る長女、家族4人で見始めた。

映画でも小説でも恋愛物は私の守備範囲外であったが、笑えるシーンも多くて、楽しんだ。

笑える恋愛アニメと油断していたら、だんだんそうでもなくなって来てなかなか心に響くものがあった。

私にはあんな青春時代は無かったが、なぜだか懐かしい気分も味わった。

特に竹本くんが、就職も決まらずその他諸々悩んだ末、自転車で自分探しの旅をする部分は、当時失業していた私の心に突き刺さった。
歳は竹本くんの2倍くらいの私であったが、彼の悩みっぷりに共感し、救われた。
彼は自転車をこぎ続け日本の北端にたどり着くが、私は自転車でハローワークまで行ってみたりした。
片道30分くらいだった。

DVD 全巻見終わる頃には原作マンガが買い揃えられ、妻と長男で読んでいた。

が。
私は当時、なんだか印刷マンガを読めなくなっていて、第1話をぱらっと見たくらいでそれ以上は読み進めなかった。

あれから2年弱。
「マンガ読めない病」も無事完治し、このたびめでたく「ハチミツとクローバー」原作全10巻を読み通すことが出来た。
アニメ版はホントによく出来ていたと思うけど、登場人物の心を文字で読むというのはまた違う深さがあった。
才能や美貌に恵まれていてもいちばん欲しい物が手に入らないストーリーは切ないけど、私はやはり「あまり持ってない」竹本くんに感情移入してしまう。

今では新しい会社にも慣れた私は、竹本くんの自分探しの旅も、大学の先生方のような暖かい目で見ることができるが、彼の悩んでいる事柄にはいちいち共感を覚える。

だからやはり、最後に彼がサンドイッチを食べるシーンでは涙が出てしまう。励まされてしまう。

家に無かったら読まずに一生終えたであろうマンガであるが、読んでよかったよ。なんか心がすっとしたよ。

そんなわけで。
現在我が家は「のだめカンタービレ」ブームだったりする。


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