翌日。
朝食後ロビーに集合して、またもやガイド付き大型観光バスでフランクフルト空港へ。
今日のガイドは日本人のおばさんで、空港へ向かう途中、いろいろ話をしてくれた。
ブックフェア視察ご一行様ということで、本に関係ある話をしてくれたのだが、今ドイツで一番売れているのは、女癖の悪いプロデューサーが書いた本だそうだ。
なんでもこのプロデューサーは仕事も派手だが、私生活も派手で、何度も結婚と離婚を繰り返していて、よくワイドショーのネタにもなるような人物で、そのあたりの話を書いた本がとても売れているのだそうだ。
そしてこのプロデューサー氏の元奥さんという人たちも、別れた後で深夜番組に出て、元夫のことを暴露する、というルートができあがっているらしい。
で、そういう番組を見たり、本を買ったりするのは、子育てが一段落した主婦とか、その姑さんとかなのだそうだ。
日本でもこんな人がいたら間違いなく、まったく同じ状態になるだろうと思うとおかしいやら情けないやらだ。
もうひとつ教えてくれたのは、第二次世界大戦の時に経済の中心地だったフランクフルトは、徹底的に爆撃でやられたということだ。
「ゲーテハウスなんか残ったのは土台だけじゃないですかね」だと。
ふーん。どうせ入れなかったからいいけどさ。
フランクフルト空港はとても混雑していて、チェックインは長蛇の列だった。ホント、スーツケースを転がした人たちが100メートルくらい並んでいた。
ガイドが「これじゃしょうがないから団体用の方から入りましょう。ホントは予約が必要だけどなんとかなるでしょう」と言うので、団体用の方に行ったらなんとかなった。
今回はみんな座席がかたまっていて、乗り込んで待っていたらフランクフルトでは別行動だった秋山さんもやって来た。これで七人全員が揃った。
ベルリンまで飛行機で約一時間。
着陸の時にけっこう揺れてちょっとだけビビる。
降り立ってみると、ベルリンはフランクフルトよりさらに寒かった。
なんだかドイツの太陽は、まぶしいのに暖かさを感じない。
またまたガイド付の大型観光バスへ。ガイドはジル、運転手はグンタだそうだ。
ジルとグンタ。声に出したくなるような素敵な響き。そのうえジルはドイツ女性としては、きゃしゃな体格で、おまけにとてもきれいな人だった。
バスに付いていた器具。
たぶん非常時に窓ガラスを叩き割るための道具。
幸いこれを使うような事態には遭遇しなかった。
でもちょっと使ってみたい。
今日は一日バスでポツダム方面やベルリン市内の観光の予定だが、時間的に、初めに昼食にしましょう、ということになり、ジルのおすすめの、森の中にあるレストランへ向かった。
バスは市街地を抜け、森に分け入り、湖畔のレストランに着いた。
保養地みたいな場所らしく、老夫婦がのんびり散歩していたりする。
ジルとグンタに誘われて森のレストランでお食事。なんだかメルヘンの世界だ。
妖精が作った料理を小人さんのウェイターが持ってきてくれるのだろう。
と思ったらウェイターは大男だった。特に意味も無く「アリガト」を連発するのでわれわれも意味も無く「どういたしまして」と答える。
ジルがメニューを読み上げて料理の説明をしてくれる。
あー、とってもうれしい。苦労した上に結局またソーセージを食べるはめにならずにすむ。それはそれで楽しいけれど。
私は鹿のステーキにした。メルヘンチックなレストランで森の鹿さんを食っちゃうのだ。
飲み物もビールだけでもいろいろあって、ジルが説明してくれる。
「ワイツェンは小麦のビールですね」
それ。
ワイツェンビヤはきのう飲んだのと同じ形の大きなグラスで出てきた。
鹿肉はどこかで食べた味のような気がするが、思い出せない。味付けがなかなかしょっぱい。
鹿肉のステーキ。
ここで書いておかなければならないのは木戸さんが頼んだ料理だろう。
アイスバインという料理だそうが、豚足の親分みたいのがドカンと出てきた。親分というより大親分、豚足のラスボス。
本日の強烈料理アイスバイン。
「どうだ!」と、いばって登場。
「これはぁ…」木戸さんも絶句している。
みんなも口々に「すげー」だの「食べられるの?」と心配顔で注目しつつ笑っている。
ジルの話では、ドイツ人でも普通は一人では食べないだろう、ということだ。
木戸さんも切り分けてみんなに分配していたが、なんだか切っても切っても原型をとどめていた。
食べても食べても減らないものなぁんだ?
もちろん答えはアイスバインである。
ドイツ料理恐るべし。
「24.宮殿でスリスリ」につづく
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