ショッピングモールへ向かうためにホテルを出ると、着いたときに降っていた小雨もあがり、青空が見えはじめていた。ありがとう、フランスの天気の神様。
広場のようなところを通り、新凱旋門の横を抜けて行ったが、新凱旋門というのは、その大きさは目を引くのだが、ガキンガキンとまっすぐな造りで、離れてながめてもあまり面白くはなかった。
新凱旋門。
四角いビルに四角い穴があいている感じか。
でかすぎて全景を写せない。
見ろ!人間が虫ケラのようだぁ!
広場に立っていた巨人像。
なぜか頭と両腕が欠けている。
そしてチ○コ丸出し。
土曜日だからだろうか、ショッピングモールはかなり混雑していて、家族連れやらそうでないのやらがドーっと流れていた。
一旦散って、各自15分間で食事できる場所を探索せよ、という命令が下されて、一人でモールの中をさまよう。
目に付くのはサンドイッチなどを食べさせる店ばかりだ。
サンドイッチかぁ。
マクドナルドがある。
マクドナルドかぁ。
極端に方向音痴の私は、こんな場所では迷ってしまう恐れが大いにあるので、ひとつの方向にまーっすぐ行って、またまーっすぐ戻ってきた。これでは満足のいく探索ができないので、ちょこっとだけ横道に入ってすぐ戻ったりしてみた。ちょこっとだけ。これが精一杯だ。これ以上やったら異国の地で迷子になってしまう。
時間より少し前に集合場所を通りかかったが、まだ誰もいなかったのでまっすぐ行き過ぎた。
適度に歩いてからまたまっすぐ戻ると、もうみんな集まっていて、無事合流。
方向音痴にとってはこれだけでも大冒険なのだ。
結局、集合場所の近くに中華の店があって、そこで食べることになった。
たくさんの料理がショウウィンドウのようなところに並んでいて、好きなものを店員に言って盛り付けてもらう方式の店だ。
チャーハンやら肉野菜炒めみたいのやら、なんだかよくわからないのやら、4点ほど頼む。
指差して「それ」って言ってただけだが、食べ物を自分の目で見て頼めるのはありがたい。
ビールも何種類かあったが、ラベルに「漢」とあるものを選んだ。
やはりここは「漢」だろう。
「漢」と書いて「おとこ」と読む。あ、中国語か。「おとこ」とは読まないな。
おいしそうなものを見ながら頼んだのはいいが、昼食にはちょっと多すぎて、満腹状態になってしまった。普段は昼にビールなんか飲まないし。
どんどん太っていくような気がしてならない。
午後のガイドが来るまでにはまだ時間があったので、ここで解散して、再度ホテルに集合しましょうということになり、またもやショッピングモールで一人になった。
今まで黙っていたが、私にはフランスで買いたい物があった。
フランスには「バンドデシネ」というものがあって、日本の「漫画」のようなものなのだが、オールカラーで、絵がとってもきれいなのだ。
メビウスという人が有名で、私もメビウスくらいしか名前を知らないのだが、フランスではぜひその「バンドデシネ」を買って帰ろうと思っていたのだ。
となると本屋だ。本屋を探せ、だ。
実はさっき食事の場所を探している時に、本屋も一緒に探していたのだが、見つけられないまま時間切れになってしまったのだ。迷子になりそうでビビってたし。
今度は時間もたっぷりあるし、なんと言っても「バンドデシネ」のためなのだ。
食事よりバンドデシネなのだ。
というわけで、CDや、DVDを売っている店の奥に臭いものを感じた私は方向音痴の身も顧みず突入を敢行した。
すると、思ったとおり本屋が現れた。あこがれのバンドデシネの売場も。
バンドデシネは、昔のレコード売り場のように、区切られた箱の中に立てた状態で売られていた。大きさもLPレコードのジャケットを縦長にしたくらいだった。
角背の上製本で、カバーは無し。厚さは表紙を入れても1センチほどだ。
レコードを探す時のように指で本をパタパタめくってゆく。
おー、メビウスだ。おー、知らない人だ。おーメビウスだ。
ってメビウスしか知らないんだけど。
しかし、ものすごくたくさんあって、迷ってしまう。
ちょっと離れて他の本も見てみる。
お!日本の漫画だ。
「鉄腕アトム」があったのでぱらぱらめくってみたらみんなフランス語でしゃべってたよ。
お!「ベルサイユのバラ」だ!
お!オスカルもアンドレもフランス語でしゃべってるぞ。
って、これはいいのか。これでいいのか。フランス人だもんな。
しかし、フランス人は「ベルバラ」を読んでどう思ってるんだろう。
ちょっと気になる。
バンドデシネの明治維新の話とかちょっと読んでみたいぞ。
再びバンドデシネ売り場へ。
山ほど買って帰りたい気持ちを抑えて3冊だけ選んだ。
予算もあるし、何より荷物だからね。
メビウスを二冊と、知らない人のSFっぽいの一冊。
これでよし。目標達成。これでもうフランスはいいや。
ってわけにもいかないか。
着いてからまだ何時間も経ってないもんね。
購入した三冊のバンドデシネ。
右の二冊がメビウスの作。
あ、しまった。
鉄腕アトムも一冊買っておくんだった。と気付いたのはホテルの自動ドアを抜けた瞬間だった。
というわけでフランス語版アトムは買えなかったのであった。
「37.エレベーターの悪魔」につづく
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