さすらいロボ ヤスジロー  2001.8.24
第11話 ロボ、壁ぎわにすわる。

西暦2032年7月08日 03:00:00 PM
街のはずれ。打ち捨てられた地区。
「すると、ゴッツォという人物は私をコスゲデンキに渡そうとしていたわけではなかったのですね?」
「ああ、やつの取引相手は、コスゲのライバルのガモウキカイだ」
「ガモウキカイ…」
「そこで俺たちは、お前をコスゲデンキに…」
「兄ちゃん、なんでロボ公にそんな話してんだ?」
「え、ああ、そうか」

「おっきい兄ちゃん、ここに入るの?暗くてやだなァ」
「ここ、夜になると出るらしいぞ」
え?何が?ねぇ、ちっちゃい兄ちゃん?何が出るの?」
「くだらねぇ事言ってねぇで早く入れよ。その階段だ」

04:26:51 PM
病院にて
「あなたがたは正当な理由なく院内に立ち入っています。
すみやかに退出して下さい」
「だから、ここにいるロボットの居場所をすみやかに教えてくれれば、にこやかに退出してやると言ってるじゃねぇか」

「この州の医療機関ではロボットの使用は認められていません。
従って院内にロボットは存在しません」
「だったらなぜ、この病院でロボットを見た人間がいるんだよ。
風邪ッぴきのロボ公が注射でも打ちに来って言うのか?」
「もう一度だけ警告します。
すみやかに、院内を徘徊している連中を引き上げさせなさい。
聞き入れられない場合、我々は持っている手段を行使して、院内の治安を守ります」

「ゴッツォさん…」

「なにぃ?」

「でかいのと小さいのとやせっぽと一緒だったぁ?
でかいのは腕を吊って、顔がボコボコだっただーあー?
あの三バカ兄弟か!
なぜ何も言ってこねぇんだ?
おかしいじゃねぇか。
あいつらを見つけて連れて来いっ!
おかしいじゃねぇか。
おめぇはヒゲを剃れ


08:23:16 PM
「俺だっていいことをしてるとは思っちゃいねぇよ」
「考え直してもらえますか?」
「いいや。
もう後戻りはできない。
それに、俺達には金が必要だ。
俺は弟たちにまっとーな人生を送らせたいんだ」
「そのためにお金が必要なんですね」
「そういうことだ。大金さえ手に入れればこの生活から抜け出せる。ゴッツォと手を切ってな。
あいつらは、特にジャンは、いっぱしのワルのつもりになっているが、今の暮らしを続けていても、ゴッツォにいいように使われて、最後は使い捨てられて終りだ。
俺はそんなやつらを大勢見てきた。見ろよ。
ちょっと失敗しただけでこんな目にあわせるんだぞ。お前の事だって、やつは俺たちに金を払うつもりなんかないのさ」
「ひどいですね」

「俺はいいんだ。もう。
あいつらも知らない所でいろいろやってきたからな。どんな死に方をしても自業自得ってやつさ。でも、ジャンとルークだけは…」
「兄としての義務感ですね」
「…そういう言葉で考えたことはなかったな。ずっと、そうしてきたからな」

「誰かを殴るのも弟たちのため。
殴られるのも弟たちのため。
働くのも。
人を脅すのも。
ゴッツォの言いなりになるのも。
みんな、弟たちのため。
ずっとそうしてきたからな」
「私はそれらの事が、あなた自身のためでもあったと推測します」
「なんだと?」
「『弟たちのため』という行動基準が存在するために、あなたは良心に逆らう時も、法を犯す時も自分を納得させることができたのではありませんか?」
「それが俺自身のためだと言うのか?」
「はい。不本意な行動を強いられた時、あるいは状況が悪化した時、あなたを支えたのは『弟たちのため』という行動基準だったと推理できます」
「…すべて自分自身のためか…
お前をコスゲに渡すのが惜しくなってきたよ」
「考え直してもらえますか?」
「いいや」

10:33:59 PM
「俺はこのままじゃ終らねェ。
今まではゴッツォのくそおやじにいいように使われてきたが、お前を売った金で、デカい事をやるんだ。」
「デカい事とは、具体的にどのような事ですか?」
「誰もやらねェようなことだ」
「具体的じゃありませんね」
「け。具体的は問題じゃねェ」
「おっきい兄ちゃんは違うことを考えているようですよ」
「なんだと?」
「あなたとルークに『まっとーな人生を送らせたい』と言っていました」
「け。ルークはともかく、俺はまっとーな人生なんてガラじゃねェよ」
「おっきい兄ちゃんは違う意見のようでしたよ」
「け。俺とルークは全然違う。あいつは優しすぎるんだ。
デカい事をするには優しいなんて、なんの力にもならねぇんだ」
「『優しさ』には力はないのでしょうか?」
「無い」

11:48:06 PM
「その映画で、主人公の少年はママを探し続けるんだけど、いくら探してもママは見つからないんだ。
ロボットだからね。
ママなんていないんだ。
でも主人公は、自分がロボットだって事は知らないんだ。
お前にもママはいないだろ?」
「はい」
「僕はママのこと覚えてないんだ。
ずっとちっちゃいころに死んじゃったから。
おっきい兄ちゃんとちっちゃい兄ちゃんは時々ママの話をしてるけど…
ちっちゃい兄ちゃんは、僕のこと本当の弟じゃないって言うんだ。
だから兄ちゃん達のママと僕のママは違う人なのかもしれない。
そうなのかな…」
「あなたとおっきい兄ちゃんの間には外見上、明らかな類似点が存在します。
私にはむしろ…」
「ルークッ!」

「そのへん片付けて灯りを消せッ!」「えっ?」

「おい、ジャン!起きろ!隠れるぞ」
「ど、ど、どうしたの?おっきい兄ちゃん?」
「やつらだ。やつらが来た。」
「やつら?」


第12話 ロボ、押し込められる。
につづく

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