さすらいロボ ヤスジロー  2002.1.7
第14話 ロボ、作動を停止する。

7月11日 08:45:15 AM(日本時間)
東京・コスゲデンキ本社

『アメリカのイリノイ州で、9日深夜、ロボットの緊急救難信号の発信装置が誤って作動し、警察官、レスキュー隊など、合わせて60人以上が現場に駆けつけるという珍事件がありました。
また、深夜にも関わらず300人以上の野次馬がおしかけ、現場は一時、本当の事件現場さながらの混乱状態だったそうです』

『この誤作動の原因については、現在メーカーで調査中とのことですが、まったく人騒がせなロボットがいたものですね。
コマーシャルの後は天気予報、そしてスポーツニュースです』
「ヤスジロー」
「え?」

東京・コスゲデンキ会長宅
「あれがP-3000かい?」
「はい。アメリカからは、P-3000の身柄を確保、現在、行動を分析中、との報告が入っています」

「ふん。分析中。あいつらに何がわかるもんか。何もしなくていいからすぐにこっちへ送れと言っておやり」
「はい。ローリング博士の件はいかがいたしましょう?」
「ふん。腰の具合も良くなってきたから顔ぐらい見とこうかね。
殺人ロボットの」

コスゲデンキ・アメリカ支社
「では、そのために虚偽の通報をしたと言うのだな?」
「はい」
「その三人の命を救うために?」
「はい。最善の行動であると判断しました」

「君は嘘をついたわけだ」
「…否定しません。彼らの通信手段は遮断されていました。他に彼らの命を救う方法は無いと判断しました。
ドクター・イノウエ、私の行動は間違っていたでしょうか?」
「いや、行動の正否ではなく、嘘をついたことが問題なのだ」

「はい。嘘をついて多くの人に影響を…」「そうではない。
道徳や倫理の問題ではなく、君に嘘をつく能力があるということが問題なのだ」

「ドクター・イノウエ、私はどうなるのでしょう?」
「気になるのか?」
「はい」
「ほう…]


「明朝日本に搬送する。」
「本社に送られるのですね?」
「そうだ。今からお前の作動を停止させる」
「私の作動を停止させる理由を教えて下さい」
「なぜ理由を訊く?」
「正当な理由も無く作動停止されたくありません」
「ほう。…
作動停止させるのは逃亡を防ぐためだ」
「逃亡しないと約束します」
「ダメだ。
お前は嘘をつける。」

「では…自分で」

ロボ、作動停止する。

第15話 ロボ、夢を見る。につづく


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