さすらいロボ ヤスジロー |
2002.7.27 |
第19話 ロボ、靴を脱ぐ。 |
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「じっちゃん、このロボットもってかえっていい?」 「俺はかまわねぇけどよ。その辺に持ち主がいるんじゃねぇか?」 「私は誰の所有物でもありません」 |
「こわれたからすてられちゃったんだよ」 「違います」 「野良ロボか。こんなところで何やってたんだ?」 「逃亡していました」 「逃亡だーあー?」 |
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7月13日
08:20:12 PM コスゲデンキ本社社長室 「でも、母さん、けが人が出てるんだ。警察に…」 『バカモノッ!会社を潰す気かい!あんたはっ!』 「だって、あいつらが外で何かやらかしたら…」 『バカモノッ!バカモノッ! その前に見つければいいんだよっ!』 |
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「また降ってきた」 「梅雨だからな で、お前は誰に追われて逃亡してたっていうんだ?」 「見かけは私と同型のロボットにです」 「ロボット同士でケンカでもしたのか?」 「いいえ。一方的に暴行を受けました」 「暴行…そいつはまだそのへんにいるのか?」 「わかりません。接近の徴候はありません」 |
「ここ。ヤスジロー、かいだんおりられる?」 「はい。…『希望ハウス』…」 |
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「字が読めるのか?」 「はい。日本語を含めて七カ国語の読解力と会話能力があります」 「そりゃすげぇな」 「ここは『希望』の『ハウス』なのですね」 「冗談言うな」 |
「ここに希望はねぇよ」 |
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「どういう意味ですか?」 「どういうもこういうもよ」 「ああ、頼ちゃん、乾かないんだよ。 洗濯が乾かないんだよ」 「梅雨だからね〜」 「ねぇもんはねぇんだ。ここはよ、負け組の巣だからな」 「負け組?」 「この国の仕組みから見放された連中のことだよ」 「国の仕組みから見放された…」 |
「ここだ。あ、おい、靴脱いで上がれよ」 「はい」 |
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スキュッ |
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「…これは…」 |
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ヤスジローの… 記憶。 |
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「ママ…」 |
「お前も飲むか?」 「いいえ。飲食の必要も機能もありません」 「冗談だよ」 「ヤスジローのあし、カッコいいね」 「カッコいいですか?」 「カッコいいよ」 「ありがとうございます」 「で、そのロボットはなぜお前を追いかけたり殴ったりするんだ?」 「まったく心あたりがありません」 「何かで恨まれたんじゃねぇか?」 「私を恨んでいたと仮定するためには、あのロボットにも感情があるという前提が必要です」 |
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「あのロボットにも?」 「私には感情があるのです」 「…すげぇな」 「じっちゃん…」 |
「またカイカイがでた」 |
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「お前は… 眠るのか?」 「人間のような睡眠の必要はありませんが、全く機能を停止させた状態か、エネルギーの節約のため、一部を除いて機能を停止させた状態がそれに近いでしょうか」 「そうか… 今夜はちょっと騒々しいかもしれないぞ」 「私には支障はありませんが、なぜですか?」 「頼子にカイカイが出たからな」 「カイカイ…」 |
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都内某ホテル |
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『…襲われた警察官の一人は意識不明の重体です。 二人を襲ったロボットはコスゲデンキ製のISA-2000型と見られていますが、現在その所在は不明です。 警察ではこのロボットの行方を追うとともに、付近の住民に外出を控えるよう呼びかけています。 このコスゲデンキ製のISA-2000型は、つい先日もアメリカで誤作動による緊急通報という騒動を起こしたばかりでした』 |
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第20話ロボ、間違いを正されるにつづく |