さすらいロボ ヤスジロー 

2002.12.31

第23話 ロボ、引き上げられる。

7月14日 06:52:10 PM
東京都足立区


「ロボットは雨なんか気にしないだろうけど俺たち生身の人間は雨に濡れると不愉快になって働きがにぶるってことをことを上に立つ人間は…ぬえ?」

「ひ、ひょい」

「なんですか?変な声出さないで下さいよ」

「おひ、あれ、あれ見ろ、あれ」
「えっ?」



「ありゃ、ロボットじゃねえのか?!手配中のロボットじゃねえのか?!」

「連絡だっ!早くっ!」
「はいっ!」

「柏崎です!手配中のロボットと
思われるものを発見しました。場所は足立区…


「こいつ、壊れてるのか?」










「うぐぇっふ…」


「なんだよ、お前こそおかしな声…」



ドサッ









なにが


いつ


どこで


狂って

   私の

手は   


血まみれだ



…ジロー


おい、ヤスジロー

起きろ、ヤスジロー


誰ですか?私を呼ぶのは?

僕だ。イシローだ。

イシロー?…ああ、あなたですか。
私は…
私は起きたくありません。
正常に機能していないのです。
感情回路が異常です。
感情回路の異常が身体機能にも影響しています。

お前もか。
僕と同じだ。
僕も正常に機能していない。

あなたは前から狂っています。

感情チップに過負荷がかかるようなことを言うな。
…まあいい。
いいか、お前も僕も
きのう、接続したその時からおかしくなったんだ。

…本当ですか?

ああ。
だからそれを修正する。

できるのですか?
この状態を修正する手段を有しているのですか?

「ああ。僕に考えがある。
だから早く立て。すぐに警官が来る。
邪魔されたくない」
「警官…」
「そうだ。早くしろ」
「私は…」

「警官は…
警官には、会えません。会ってはいけないのです」
「僕も同じだ。よし。
立て。立って僕について来い」

「どこへ?」

「誰にも邪魔されないところだ」

「こちら東京都足立区の、コスゲデンキ本社正門前です。夕刻から降り出した雨の中、多くの報道陣がつめかけていますが、その門は堅く閉ざされたままです。
建物にはいくつか明かりのついた部屋も見えますが、事件発生後、コスゲデンキから公式のコメントは無く、事件との直接の関与は依然不明のままです。
いったい、この門の内側で何が起こっているのでしょうか?」


「ああ、どうしようどうしよう、テレビであんなこと言ってる。どうしよう」


「君たち、なんとかしたまえ」
「はっ。会社にとって最善の行動を迅速に実行いたします。社長、御指示をっ」
「この事態を解消したまえ。僕は社長だよ」
「はっ。粉骨砕身、会社のためにこの身をささげる覚悟でございます。社長、御指示を」
「君たちには危機管理と問題解決の責任があるんだよ。僕は社長だよ」
「はっ。スキルとモチベーションとコンピテンシーを持った者が現在会議中でございます」


「笠原」
「はい」
「あいつらは良輝をおちょくってるのかい?それとも本当の馬鹿なのかい?」
「彼らはあれが本気なのです」
「はぁ〜ぁ…
いつからコスゲデンキは馬鹿牧場になっちゃったんだろうねぇ。
だいたい何をあんなにうろたえる必要があるっていうんだい?
交通事故が起こった時に自動車メーカーが責任をとるかい?」
「会長、製品の欠陥が証明された場合、法律上の責任は…」
「おだまり。そんなことは知ってるよ。
つまり、欠陥が証明されなければいいってことだね」

「ここは…」

「ここなら誰にも邪魔されないさ」

「登るぞ」

第24話ロボ、接続するにつづく


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