さすらいロボ ヤスジロー | 2001.5.16 |
第8話 ロボ、電話をかける。 |
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西暦2032年7月05日
04:19:52 PM 「急いで!がんばって!」 |
「パパを助けて!! あー!もう少し!ああ!ああ!」 |
「やったぁ!」 |
「救急車を要請します。パパは電話を持っていますか?」 「ぼく、電話持ってるけど、ママにしかかけられないんだ。パパは使っちゃいけないって…」 「貸して下さい」 「…」「緊急通報なら大丈夫。 つながりました。河で溺れていた人を引き上げました。救急車を要請します。…成人男性です。意識がありません。…正確な場所は…」 |
大平洋上空 コスゲデンキ社用機内。 |
「ママ、日本で会長に会ったら僕はどうすればいいの?」 「会長の言う通りにすればいいのよ。多分、あなたの機能を確かめる事になると思う。感情とか、知識とか…」 「ママも一緒にいてくれるんだよね?」 「…わからない。でも、怖がらなくてもいいのよ。日本に着くまでに私があなたの調整をして、必要な事を全部教えてあげるから」 「僕とママ、二人でやるんだね」 「そう。私とイシローの二人でやるのよ」 「何でもママの言う通りにするよ」 |
「気道の確保をしましたが呼吸が戻りません」 『口の中に異物が無いかもう一度確認して、無ければマウス・トゥー・マウスの人工呼吸を試みて下さい。やり方は御存知ですか?』 「知っています。しかし私にはできません」 『人の命がかかっています。お願いします。さぁ。』 「私は呼吸をしません」 『…… おまけに心臓も動かないし、血も涙もないんだろ?』 「その通りです。私はロボットなのです。」 『いたずらなら…』「待って!切らないで!」 「パパを!パパを助けて!どうすればいいの?ロボットにできないなら僕がやるよ!教えて!ねぇ!どうすればいいのっ?」 『今のは…』「やってみましょう。思い切り息を吸って、お父さんの口に吹き込んで下さい。」『おい、聞いてるのか?』 「口と口をぴったりつけて…吹き込む!」『…』 「息が漏れています。もう一度。もっと口をしっかりつけて!思い切り、吹き込むっ!!」『わかった!信じる!信じた!』 「さぁ、もう一度。あなたの一番の力で…吹き込む!」 |
『子供なんだな!子供がやってるんだな!』 「もう一度!あきらめないで!しっかり口をつけて…」『吹き込めっ!!』 「そう!今の調子で!もう一度。口をつけて…吹き込む!」『あきらめるな!』 「もう一度!」『君ならできる!』 「もう一度!」 「もう一度!」 |
再び大平洋上空。 「主任、支社から電話です」 「はい」 『P3000の居場所が確認されました。』 「ヤスジローのっ!?確保したの?」 『いいえ。わかったのは、2時間前の居場所だけです』 「どういうこと?ヤスジローはどこにいるの?」 「ママ、どうしたの?ヤスジローって誰?ねぇ、ママ!」 『現時点の所在は不明です。P3000は約2時間前にGPSで位置確認と周辺のマップのダウンロードをした後、接続を切りました。今、保安部が向かっているところです』 「2時間前って…あなたたちは何をやっているの?!!」 『無理を言わないで下さい、主任。我々も限られた人員でベストを尽くしています』 「ママ!ヤスジローってだれ?!!」 「言いわけはいいわ!必ずヤスジローを見つけて、私の所に連れて来て!!」 |
「ママーッ!! |
「パパ、大丈夫かなァ」 |
Hiroe Kyomi Sakairi |