さすらいロボ ヤスジロー  2001.6.06
第9話 ロボ、パパと語る。

西暦2032年7月06日 01:02:13 AM
病院内
「ロボットってのは命令されたことだけやるもんだと思ってたよ」
「その認識は間違っていません。ほとんどのロボットは命令やプログラムに従って行動します」
「お前は違うんだな」
「はい。私は違います。私は自分の判断で適切な行動を選択します」

ヤスジローとパパ

「適切な行動で俺を助けたってわけか」
「クリスに要請されました」
「クリスに…」

パパとクリス

「で、クリスは何か言っていたか?」
「何かとはどういうことですか?」
「俺が…俺が死のうとした事を、だ」
「死のうとした?…河で?クリスは『パパが河に落ちた』と言っていましたが、違うのですか?」
「ああ」
「溺死を試みたのですか?」
「でき…ああ、そうだ」
「なぜそのような行動をとったのか教えていただけますか?」
「…お前に話しても…」

イシローとママ
日本 埼玉県かすかべ空港

「イシロー、何を怒っているの?」
「僕は怒ったりしないよ。
機械だからね」
「イシロー…」

苦悩するパパ
「…なるほど…
確かにその経営者は、労働者を含めた資本主義の構造を理解していないという点で愚かであると言えます。
また、感情に流されて違法行為を行っていることを自覚していないという点で、人間として程度が低く、卑劣な人物でもあります。信じていた同僚に裏切られた事や、さまざまなプレッシャーもあなたを精神的に追い詰めたということは理解できます。それは理解できますが、なぜそこから自殺という選択に結びつくのか理解できません。それらの出来事はすでに過去の事で、現在に影響は無いではないですか」
「機械にはわからないよ。俺はもう…つぶれたんだ」
「つぶれたとはどういう状態ですか?」

「こういう状態だよ。仕事にも就けず、息子を養うこともできず、自分が死ねば母親が戻って来てクリスの面倒を見てくれると考えるような、こういう状態だよ」
「仕事ですね」
「何?」
「あなたの今の問題は仕事が無いということです。ならば仕事を見つければいいのです」
「簡単に言うな…あのクソヤローのおかげで俺は仕事に就けないんだぞ」
こういう状態だよ

語るヤスジロー
「その『クソヤロー』のためにあなたは死ぬのですか?
『クソヤロー』のためにクリスを泣かせるのですか?
あなたを失ったクリスはどうなりますか?
『つぶれ』てしまうのですか?
『クソヤロー』はあなたをつぶし、あなたはクリスをつぶすのですか?
それでいいのですか?
クリスのような子供が、大人に人工呼吸をして成功させるのは容易なことではありません。
でもクリスはあきらめずにやりとげました。
あなたはあきらめるのですか?
解決すべき問題が明らかであるにも関わらず、あきらめるというのですか?そのような思考の展開は、私にはまったく理解できません」
「驚いたな…」
「?…」「お前、
怒ってるみたいだぞ」

「…とにかく、
クリスにはあなたが必要で、あなたには仕事が必要です!」
「おい、どこへ行くんだ?」
「私は電話をかけに行ってきます」
「電話って…、こんな時間にか?」
「……、朝にします」

立ち上がるヤス

車は走る 7月07日 02:11:11 PM
森を抜ける道路上



「クリス?なに見てんだ?ニコニコして」「え?これ、ヤスジローが書いてくれたの。」
「なんだ、『かわいいコックさん』じゃねえか」
「パパ!知ってるの?」
「知ってるさ。♪あっというまに、かわいい…」「♪コッ・クーさ・ん♪」
「エヘヘ」「ハハハ」
「ハモったね、パパ」
「ああ、ハモったな」
「パパ、すごいね」
「…すごいのはヤスジローさ。それとお前だ。クリス」
「パパもすごいよ」
「パパは…、これからすごくなる」
「今もすごいよ」
「ハハ、もっとすごくなるよ」
「じゃ、僕も」
にっこりクリス

02:46:00 PM
「ここ…だよな」「うん」

「やい、そこの親子、そんなところで何やってんだ」
「え?」「あっ!」

「よさないかセリザワ。
フィッツシモンズさんですね、そして君はクリス」「あ、先生だね?」
「ハハ、そうだよ」
「悪いやつはシュート!シュート!シュート!」
「あ、フランクさんだ!」「お前、何でも知ってるな」
「うん、フランクさんは社長なんだよ」
「そして、スペース・ニンジャでもある」

みんな

「は、はじめまして、フィッツシモンズです。俺にできるのは…」

7月07日 02:59:01 PM
オーガスタス・フィッツシモンズ、職を得る。

第10話 ロボ、語られる。につづく


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